RETIREMENT ON THE LINE
age, work, and value in an American factory
人類学者である著者による、アメリカの高齢者を積極的に雇う会社を調査した本。
インタビューの他、実際に一緒に働いてみての体験し、分析をしている。
高齢者を雇うことが、企業の成長にも繋がっている実際の例として、参考になるだろう。
まぁ内容的にはとてもいいんだけど・・・長い。
この内容で400pageは多いと思うわ・・・
もう少しなんとかならない物か。
とりあえず、企業が高齢者を雇うことでプラスな面が幾つかあるようだ。
●安い賃金でも働いてくれる。
(補助的な収入になる。働ければお金は二の次の人もいる。)
●社会保障費など、国に払う金が少なくてすむ。
(年金や雇用保険的なものを払わなくていい)
●職業倫理感の強い人が多い。
●社会に貢献している会社として、よいイメージを得れる。
●珍しい会社として、メディアが取り上げてくれる。
●従業員同士が競争しないで支えあってくれる。
●フルタイムで働かせなくてよい。
●高度な知識や経験をもった人材を活用できる。
さらに、高齢者側にとってもプラスである。
●役に立っている感覚を得れる。
●お払い箱になったという感覚からの脱却
●同じような高齢者と活動できる。
●助け合いが出来る。
●社会的なつながりを持てる。
●長生きに繋がる
●運動能力の維持。ボケ防止
●収入が得れる。
●メディアの取材があれば、特別な感覚を得れる。
社会にとってもプラスである。
●労働力の確保
●死ぬギリギリまで、そこそこ健康で居てくれる。
しかし、社会としては下記のような懸念がある。
●お金が必要な若い世代の仕事を奪っている。
(主にネットでこのような批判がされていたらしい)
●国に払う社会保障費が少なくてすむ→労働市場的に不当な競争の要員
(日本でいえば、夫の扶養にとどまるパートの主婦なんかがコレだが)
また、企業として対応が必要な事もある。
●作業スピードはやはり遅い。
●人によってスピードや力、知識など、能力に大きな違いがある。
●フルタイムで働けない人も多い。
●柔軟な働き方への対応が必要になる。
(午後に孫を迎え意に行くため午前中のみ・・など)
●経済的にも、人により状況はまちまちである。
●雪が降ったら、ケガを恐れて出てこなくなる。
●ポリティカルコレクトにマッチしない。
(差別や偏見など、古い考え方の人が多い)
●新しい機械に抵抗を示す。
(パソコンはもちろん、FAXにすら抵抗を示す例が出ている)
●やりなれた作業はこなせるが、新しい作業にすぐに対応するのは難しい。
●高齢者を低賃金で働かせて、「搾取しているのではないか」という世間の目。
●近隣の高齢者しか使えない。
この本に出てきたヴァィタ・ニードルという会社は、
高齢者をクビにしたことがないと言われているが、
毎日入り口の19段の階段を上れる必要があり、(上れない=出社できない)
場合によっては、家族に「おじいちゃんはもう来ない方がいいかもしれない」と宣告はする。
また採用時には、何のために働くかなどを重視し、
会社に馴染める人をちゃんと選んでいる。
成功している理由にしても、
扱っている製品が多品種少量生産、技術的に高度な製品で
熾烈な競争にさらされていなかったり、
また、それらの製品を必要とする会社が比較的近隣にあるなど、地理的な優位点があり、
さらに、比較的教育水準が高い地域であることも上げられている。
まぁ、どんな高齢者でも役に立って働けるとか、
どんな会社でも高齢者を活用すれば上手くいくという、
バラ色な話にはなっていない。
また、この本でページを割いている内容として、
メディアの取材に対するお年寄りの対応や変化、
それ自体が報酬の一部として機能している事を書いている。
(個人的な感想としては、読み物として別の本に分けて欲しかったが)
一億総活躍社会とやらで、
これから、高齢者を活用していこうという日本としては、
実際に成立している例として読んでおくのはよいかも知れない。
(しっかし長い・・・)
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