2016年2月11日木曜日

【読書メモ】『こうすれば犯罪は防げる - 環境犯罪学入門 -』谷岡一郎 ★★★☆

サブタイトルにあるとおり、「環境犯罪学入門」という感じの本。
環境犯罪学ってなんぞやっていうと、
従来の環境学との違いは下記のような感じ。

■従来の犯罪学
 普通の正常な人は犯罪を行わないという前提にたつ。
 そのうえで、犯罪者がなぜ犯罪を行ったかを研究する。
 犯罪者個人の育った環境や教育なども扱う。

■環境犯罪学
 集団の中には、一定の割合で犯罪を行おうとする人間がいる事を前提とする。
 そのうえで、犯罪と環境の関係、誘因などを研究する。
 犯罪者個人の性格や判断なども考慮するが、あくまでも環境が研究対象。
 有名な「割れ窓理論」なんかがこれ。

環境犯罪学理論の分類

この図が分かりやすかった。

「社会的コントロール理論(ハーシー)」ってのは
トラヴィス・ハーシーの社会的絆理論って呼ばれてる奴だな。
聞いたことがある。

中心部の「CEPTED」はこの本では軽く触れられるだけだったが、
考え方は他のと似ているので、定義を拡張すれば、
結局はCEPTEDとも考えられるようだ。
Crime Prevention Throuth Environmental の略

この本で大きく扱われているのは、
「ルーティン・アクティビティ・セオリー」というやつ。


ルーティン・アクティビティ・セオリー

下記の3つの犯罪の構成要素に注目し、対策を検討する。

犯罪の構成要素
1.犯意のある行為者
2.ふさわしいターゲット
3.抑止力のある監視者の不在

この3つが同時に、同じ空間に存在したときに犯罪が発生すると考える。
そして、それぞれの要素関にも着目する。

行為者 ~ ターゲット:アクセス
ターゲット ~ 監視者:ターゲットコントロール
行為者 ~ 監視者:社会的抑止力

例えば、
貴重品を金庫にしまうなどは、アクセスを遮断する行為だし、
家の周りが外から見えるように、塀を低くするなどは、ターゲットコントロール。

また、ご近所がみんな顔見知りのような土地では、よそ者は目立ってしまうが、
都会のマンションのような、隣の人の顔も知らないような状況では、
空き巣の下見をする人が居ても、誰も気に留めない。
ここで違ってきてるのは社会的抑止力。

なるほど感。
ルーティン・アクティビティ・セオリーの概念は、
防犯を考える上でよい補助線になるなと思った。

まとめ

すでに環境犯罪学を知っている人には、物足りない内容かもしれないが、
その概念すらよく知らない人にとっては、為になると思った。

上記以外にも、筆者が行った高校生の非行と犯罪についての研究やら、
制服の犯罪抑止効果など、門外漢でもなるほど感のある内容だった。

というか、防犯は誰にとっても必要なことだしな。

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