2016年1月28日木曜日

【読書メモ】『歴史人口学で見た日本』速水 融 ★★★

著者は日本の歴史人口学の大家らしい。
3割くらいはそんな著者のエッセー的内容。
あと、まだ未完のこれからとなる課題についても書いてある。
その辺はちょっとビミョーな本。

しかし、宗門改帳という膨大なミクロデータから分析した結果は
そこそこ興味深い内容だし、引用したくなるデータも含んでいる。

都市アリ地獄説

都市部は出生率が低いが死亡率が高い。
そのため人を農村から人を呼び込むが、その高い死亡率により結局殺してしまう。
そうして全体(関東地方や近畿地方というくくり)としては、人口は減る。

ヨーロッパでも同じような現象がみられ、
「都市墓場説(Urban Graveyard Theory)」と言われているようだ。

合同家族世帯から直系家族世帯へ

17世紀の人口増大の理由のひとつとして挙げられている変化。

合同家族世帯とは、
親夫婦、子夫婦、兄弟夫婦、叔父、叔母、従兄弟などが纏まって住む形。

直系家族世帯とは
核家族世帯(親と子の世帯)+祖父&祖母

人数の多い合同家族世帯では結婚しない奴も結構居たが、
直系家族世帯になると、だいたい結婚するようになるようだ。
外国だとまだ合同家族世帯みたいなのあるよね。
言われてみればそんな感じかも。

出稼ぎ奉公とお家断絶

昔は子供の死亡率が高かったため、跡継ぎが生まれ、無事成人するためには
統計的(確率的?)には子供を4.5人以上産む必要があった。

その4.5人を産むためには、これまた統計的にいうと、
25歳までに結婚する必要があったと。

出稼ぎに出ていると、この条件を満たすことが難しく、
家系が途絶える可能性が高くなった。

なので、出稼ぎ奉公が必要となる分家やら小作やらでは、
そのうちにお家断絶してしまいますよと。

そして、そのあいた土地には、本家の次男や三男が分家で入ると。
そういうループになっていたようだ。

地域別の人口パターン

宗門改帳に見られた地方別の特徴
・東北
早く(女子は15歳くらいで)結婚するけれども子供の数が少ない。
母親は子供を4~5人産んで、産み終わった後は家の労働力になって働く。
その後は出生制限を行う。
・中央
結婚年齢は比較的遅い(22、23歳くらい)が、子供は産み続ける。
・西南日本(東シナ海沿岸)
結婚年齢は遅いが、結婚前に子供を生むことがある。
離婚も多く、一つの結婚と次の結婚とのあいだに子供を生むこともある。
性行動に関して、東北や中央とやや異なり、倫理的に自由である。
まぁ夜這い文化とかその辺。

その頃の結婚事情

東美濃の輪中の平坦部という、かなり点でのデータになるが
・平均初婚年齢:男28歳、女20.5歳
・結婚の継続期間
 一番多いのは1年(7%)
 25年(銀婚式)超えは2~3%
 50年(金婚式)超えは0.5%

まぁ死亡率が高いという事も、大きな要因のようだ。

まとめ

まぁ資料的価値がそこそこある本という事でいいんじゃないかな。
でも、この人以上の人って出てこない気がするし、
また、最近のは数字そろってるし、昔のはこれ以上できない気もするし、
なんか無くなりそうな分野なんじゃないの?みたいな。

最近の著者のインタビュ
「人口減少=悪」ではない 次世代に向けて発想を転換せよ

0 件のコメント:

コメントを投稿