一冊にいろいろ詰め込まれてる感と、
資料を基にした分析やらも多いので、いろいろ役立ちそうな本。
タイトル的には心理学の本だが、社会学への心理学的アプローチみたいな感じ。
8章に書かれている下記が、この本の趣旨を表している。
わが国では,成長を象徴する年代を生きる子どもや若者が,
心身ともに苦しい生活を強いられていること,
特に,若者が働いてもはたらいても,なおも貧困にあえぎ
人格的な自立をむずかしくしているという現実は,
人間の成長・発達を保障すべき心理学研究の大きな課題でもある
174page
人間科学としての心理学は人間科学としての社会学や教育学などと協力して
文化の創造者であり運載者である人間の形成を問題として
研究の総合体制を整えてゆかなければならない。
175page
まぁそんな感じの本。
この辺もちと長いけど引用。あぁ・・確かにな感。
若者の就労困難が顕著になってくる中で,2003年,
国(文部科学省・厚生労働省.経済産業省・内閣府)は,
「若者自立・挑戦プラン」を発表しました。
その後も,次々と若者自立支援政策を打ち出しています。
しかし,その多くは労働市場政策中心主義といえるもので,
若者と企業のマッチングを主として若者のキャリア意識の育成によって改善しようとするものです。
つまり,若者の「人間力」や「就職力」が問題にされることはあっても,
人間の成長過程と労働の本質的なことがらがどのように関わっているのか,
それを保障するにはどうしたらよいのかといったことを根本から問うことはあまりありません。
少し極端な言い方かもしれませんが,
過労死(業務起因性精神疾患自殺を含む)を生み出すような労働の現場に,
若者がいかにして自分を変えて適応するかを勧奨しているようなものです。
175-176page
こういうのは、ぬるぬるで生きてるこんなオッサンよりも
若者がもっと読んでおくべきだと思うのだが、
実際に厳しい立場におちいっちゃってる若者には、こういう情報は伝わらないのよな。
まぁ社会っていろいろ難しい。
目次
第Ⅰ部 労働の実態と労働者の意識
第1章 日本の社会状況・労働実態・労働者の意識(荒尾貞一)
第1節 若者たたきと青少年の周辺化
第2節 集団性の再構築
第2章 職場における労働問題(都筑 学)
第1節 職場と労働者の実態
第2節 職場から離れる
第3節 働きすぎること
第4節 働く人たちを支える
第Ⅱ部 働くことを通して青年が獲得する力
第3章 青年期から成人期にかけて働くことを通じて形成される力(白井利明)
第1節 社会に出る前に働くことで形成される力
第2節 社会に出た後に働くことで形成される力
第3節 現代社会への以降におけるキャリア形成
第4章 若者の自分さがしと職業(村澤和多里)
第1節 自分探しとモラトリアム
第2節 若者の働くことに対する不安
第3節 若者の「自分さがし」のために
第5章 格差社会における若者の〈自己実現〉
───「働けないこと」の心理学序説(加藤弘道)
第1節 〈奪う〉という支援のかたち
第2節 格差社会と〈自己実現〉批判
第3節 当事者にとっての〈自己実現〉言説
第4節 当事者にとっての〈自己実現〉的なるものの意味
第5節 〈自己実現〉批判を超えて
第Ⅲ部 人生において労働がしめる位置
第6章 仕事と生活───働くことと生きること(菊地則行)
第1節 仕事と生活の関係の現状
第2節 仕事と生活の関係の心理学
第3節 仕事と生活の人間的な関係
第7章 女性の就業問題(青野篤子)
第1節 女性の就業の実態
第2節 女性のキャリア
第3節 これからの労働のゆくえ
第Ⅳ部 心理学における労働の研究
第8章 働くために必要とされる力
───児童期から青年期にかけて形成されるもの(間宮正幸)
第1節 働くことと人間の成長
第2節 働くことと人間学
第3節 働くこととじ児童期
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